現在各業界にて活躍されている文連のOB/OGへの取材を通じて、文連の活動や歴史をお伝えします。
星野睦郎/株式会社パス・コミュニケーションズ 代表取締役会長
昭和38年 慶應義塾大学法学部法律学科を卒業、新卒で世界的な外資系エネルギー会社に入社。その後、広告関係業に転職し、(株)パス・コミニュケーションズを設立。現在では、渋谷など都内の一等地にOOH(大画面液晶広告)を所有し、大型ビジョン業界のリーディングカンパニーとなっている。一般社団法人日本パブリックビューイング協会代表理事。
ー星野さんの大学生時代のお話をお聞かせください。
星野:私は、学生時代には、KBRという音楽系のサークルと、文化団体連盟の常任委員をしていたため、とにかく忙しかったという思い出があります
ー2つも団体に所属されていると、とても忙しいですよね。学業のほうは大変ではありませんでしたか?
星野:学業はとにかく助け合いでした(笑)。それこそ、同じ文化団体常任委員の方とは強固な協力関係を築いていました。
ー文化団体連盟は、関わる時間も長い分、人間関係が濃くなり友達もたくさん作れますよね。当時の文化団体連盟はどのような組織だったのですか?
星野:私が文化団体連盟に入った当時は、文化団体連盟に加入する団体は80以上あり、また委員もサークルから推薦され、選挙で選ばれていました。だいたい例年15人ほど立候補して12人が当選する位の倍率だった記憶があります。3年生の頃は、執行委員、そして4年生では常任委員として活動していました。最近は選挙ではなくなったのでしたっけ?
ー最近では選挙ではなく、面接で現役委員を決定しています。選挙だとどうしてもハードルが高くなってしまいますね。星野さんは現役委員時代に、どのようなお仕事を文連でされていたのですか?
星野:私は、現役委員の時は、企画をしていました。そして企画では渋谷や銀座のダンスホールを借りてダンスパーティーを開いたり、懇親会をひらいたりしていました。そのときに培った企画の能力は今でも会社やプライベートでとても役立っています。
ーダンスパーティーの企画や懇親会、すごく楽しそうですね。学生時代にそのような経験が出来ると経営でもプライベートでも役立ちますね。KBRのほうではどのような事をされていたのですか?
星野:KBRではタンゴをやっていました。最初はアコーディオンを弾いていたのですが、三田祭でKBRにスカウトされて、タンゴを始めました。そして最終的にはタンゴのマネージャになり、そこでも組織運営を任されていました。
ータンゴをされていたのですね!今もタンゴは続けられているのですか?
星野:今もタンゴは続けています。そして現在、文連時代に企画として培った能力をいかし、現在では日本最大のタンゴフェスティバルを開催しています。
ー日本最大級のタンゴフェスティバルを主催されているように、タンゴが相当お好きなのですね。タンゴフェスティバルにはどのような方が参加されるのですか?
星野:このタンゴフェスティバルにはもちろん、プロの演奏家の方も来られます。しかし、特色というと早稲田大学の現役タンゴサークルメンバーと慶應義塾大学のタンゴ演奏者がいっしょに出演することですね。やはり慶早は盛り上がります。
ー慶應義塾大学と早稲田大学に加えて、プロの方が参加されると、かなり盛り上がりますね。ぜひ、来年度も期待しております。さて、最後になってしまうのですが、なにか今の学生たちに一言いただけますでしょうか?
星野:とにかく学生時代には忙しいくらいたくさんのことをしてほしいと思っています。大きなリスク無く、あらゆる事に挑戦できるのはまさに、学生時代です。勉強だけでなく、多くの人と交流し、楽しみながら社会性も学んでください。次世代の皆さんに期待しています。
ー本日はお忙しい中、ありがとうございました。
小山玲央/小学館株式会社 第四コミック局 ガガガ文庫編集部
平成24年 慶應義塾大学文学部を卒業後、新卒で小学館株式会社に入社。小学館では、ライトノベル系文庫レーベルである「ガガガ文庫」編集部に勤務。入社以来、担当した代表作品として、2017年9月に映画化された『二度目の夏、二度と会えない君』(ISBN 978-4-09-451532-9)がある。
ー慶應義塾大学でも、出版業界はとても人気の業種の一つです。特に小学館は出版社の中でも人気が高いですが、採用人数が少ないため、狭き門といわれています。そのような多くの学生があこがれる小学館で、小山さんはどのようなお仕事をされているのですか?
小山:会社のこととはいえ面と向かって、あこがれるといわれると少し恥ずかしいですね(笑) 私は、小学館の中でもライトノベル(SFやファンタジー、ラブコメなどを扱った若い読者向けの書籍)を扱うガガガ文庫で編集業務をしています。仕事内容をざっくり簡単にまとめてしまうと、作家さんの原稿執筆スケジュールを管理したり、できあがった原稿を確認したり、などです。日々、時間と文字と格闘して過ごしています。
ー私たちが今本を読めているのは、作家の方と編集の方のタッグがあってこそなのですね!だいたい本はどれくらいの頻度で出版されるのですか?
小山:私の場合は平均して月に1冊程度、書籍を担当しています。調子の良いときは、その中から映画化やアニメ化、コミカライズされるものが出てきたり、場合によっては新装版で出版されたり、増刷されるものがあったり、となります。なかなかないですけどね!
ー映画化と言えば、小山さんが担当された『二度目の夏、二度と会えない君』は2017年に映画化され、大きな話題を呼びましたね。映画化される書籍の編集となると、通常の書籍より編集で重視する箇所が変わったり、そもそも構成方法が大きく変わったりするイメージがあるのですが、小山さんは映画化するに当たり、何か苦労されたことはありましたか?
小山:出版した時点で映画化されるかどうかなどは、正直分からないのですよ。なので編集方針が変わるということはあまりないです。むしろ出している本は全部売れて欲しいので全部ひたむきに全力です。(笑) 映画化の際の苦労というのは正直ないのですが、普段の書籍作業よりも関わる会社や人間の数が多くなりますので、純粋にやりとりの回数が増えるというのが少し大変だったかもしれません。とはいえ、作品が大きくなる喜びの方が大きいので、そこまで気にはならないというか……。
ーありがとうございます。出版時点では映画化についてはわからないのですね。ところで、小山さんの塾生時代のお話も伺わせて頂きたいのですが、小山さんは学生時代、どのサークルに所属されていたのですか?
小山:私は塾生の時、文化団体連盟傘下団体であるシネマ研究会に所属しておりました。シネマ研究会というのは映画を撮ったり、映画について意見を交わしあうサークルです。このサークルのおかげで映画に関する貴重な知識が手に入った気がします。編集業において映画の知識はとても大事なので、入っていて良かったなあ、と思います。私は映画をまったく撮りませんでしたけどね!(苦笑)
ー映画について意見を交わし合ったり、映画を撮影出来る点、とても楽しそうですね。今もシネマ研究会は文化団体連盟の加盟団体ですよ。小山さんはどうして文連に加入されたのですか?
小山:在学時は文学部でしたので、2年次から三田に通うことになりました。ということで活動に参加しやすかったのに加え、多くのサークルの運営を助けたり、塾生の福利厚生に貢献できるというのを魅力的に思っていたような気がします。実際、学生のときにこのような大きな事業にかかわれる機会は滅多にないでしょう?
ーたしかに、学生だとサークルメンバー数十人~多くても数百人のマネジメントしか出来ませんが、文化団体連盟は傘下団体に加盟する慶應義塾の学生数千人の福利厚生向上が目的なので物事を多角的・俯瞰的・長期的に事象を判断する能力は確実につきますね。小山さんは、文連では、どの役職をされていたのですか?
小山:文連での役職は委員長でした。委員長でしたので、文連の仲間と助け合いながら部室でいろいろな仕事をしていました。帳簿の作成とか帳簿の作成とか。委員長は、一つの仕事に特化するのではなく、文化団体連盟の組織を理解した上で適宜マネジメントを行う役職ですので多くの仕事を体験することができました。各サークルへの交付金の調整であったり、部室棟のルール管理であったり、他の団体ではなかなか体験することがないものだったのではないかな? と思います。あと、帳簿の作成とか。
ー小山さんは文連で委員長をされていたのですね!委員長として、文連での思いでは何かありますか?
小山:委員長としての思い出ですか……。印象深かったのは、リーダーズキャンプですね。全協という、上部7団体(慶應義塾の学生自治を行う7つの団体で、慶應義塾全塾協議会・慶應義塾體育会など)が予算審査を泊まりで行う合宿です。そこでは多くの団体が予算獲得のために舌戦をするわけですが、会議が終わると皆で打ち上げをしまう。それはもう激しくも楽しい飲み会でしてね……、ええ。すっかり先ほどまでの舌戦を忘れて仲間になるんです。體育会ってすごいなあ、と心底思いました。そこで知り合った友人とは今でも、食事に行ったりしています。
ー舌戦を繰り広げても会議が終われば仲間という関係を築けるのは、卒業後の会社でもかなり役に立ちそうですね。逆に、学生時代こんなことをしたけど全然社会で役に立たなかったという経験はありますか?
小山:今はあまり知識として使っていないかも? と思うのは学部で専攻していた哲学でしょうか。まあ、そもそも何かに役立てようと思って学んでいたわけではないので当たり前ですが。形而上学ジャンルが好きだったので、今でもヒマなときに考えるのは楽しいです。ただ、仕事ではねえ……。学んでいた時に楽しかった記憶はありますし、論理的な思考の組み立てなどは役に立っているとは思いますが、存在論とかを持ちだして業務中に「この本は本当にそこに存在しているのか?」とか考え始めたら仕事にならないですもの。その時は仕事を辞める時です(笑)
ー私もカントやアランを読むことがありますが、たしかにあまり実生活で役になった記憶は無いです(笑)。小山さんはなにか今後の目標はありますか?
小山:今後の目標としては、やはり物語に携わるものとしてヒット作を夢見てはいます。ただ、それには一つ一つの作品に誠実に向き合っていくことが必要で、こちらの方が個人的には大事かもしれません。ヒット作を出すことは、ある種の夢で、目標は何があっても作品作りに妥協しないこと、かもしれません。
ー小山さんが編集されたヒット作、期待しています!(笑)最後に、塾生に一言いただけますでしょうか?
小山:大学の4年間は人生のうちで最も行動の幅を広げることができる4年間です。その4年間を後悔しないように、たくさん遊んで、いろいろなプロジェクトに挑戦してください。新しい挑戦の一つに文化団体連盟に委員として加入するのも良いと思います。文化団体連盟では、年齢層の広いOB・OGの方々に相談できたり、決定権を持った大人と交渉できたりと、新鮮な経験ができます。ぜひ、悔いのない大学生活を送る選択肢の一つに考えてみてください!
ー本日はありがとうございました。